まちこの部屋

聖なるあきらめ

高瀬舟ではない

森鴎外の「高瀬舟」という小説は、安楽死を考える時によく出される小説です。

罪人を乗せる高瀬舟で、罪状のあらましが語られるという内容です。

罪人は、兄弟二人で貧乏暮らしをして生きてきました。

が、弟が病に倒れ、更に貧困に見舞われます。兄は、必死に働き懸命に弟の世話をします。ある日、帰宅すると喉に刀を突き刺して血まみれの弟が「死にきれなかったから刀を抜いて殺してほしい」と息も絶え絶えに懇願してきます。兄は断り続けますが、もう助からない事が明白であり、泣く泣く刀を抜いてあげます。抜いた瞬間、近所の人に見られ、弟殺しの罪で裁かれたのです。

鴎外独特の美しい文体で、何度読んでも名作です。

何故、長々と引用したかと言うと、またまた胸がムカムカする事件が起こったからです。

自殺希望の女子大生を、「自殺幇助目的」で殺害したというものです。

SNSで知り合い「自殺を助けた」と主張している事件です。

鴎外の話と比べてみれば、やむにやまれぬ感もないし、本当に自殺幇助だったかすら分かりません。

この私のブログを自殺願望のある人は、見ていないかもしれないけど、でも伝えたいのです。

お願いだからSNSで「死ぬの助けてあげるよ」なんていう人についていかないで下さい。

今日、死にたいほど嫌な世の中であっても明日になったら、少しましな世界に変わっているかもしれません。

死にたいという気持ちは、生きたいと裏腹です。

ろくに知らない人に、命を委ねないで下さい。

今は居場所がない、生きていても仕方ないと思っているかもしれない、でも死ぬ事を手伝う人は偽物です。

また、こういう人が出回らない工夫を政府はしてほしいし、それが自殺予防につながっていきます。それを切に願っています。

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